べっぴんさんには弱い

相変わらずの美しさである。
後期高齢者に手が届く年齢、独身である。
彼女とは月一回、会食する。
「今日は地味なかっこして来たんよ」
と言うが、明らかに私よりは派手である。
未だに男性にはモテモテである。
羨ましい話だが、会う度に新しいボーイフレンドが出来ている。
地位、名誉、お金がある人が多いので、いっそ結婚したら?と言うと、
「そんなんしたら、永久ヘルパーさんになるから嫌やわ」
相手も、かなりの年なのでそれも納得。
スマホを使いこなせば、昭和一桁の殿方も、
メール攻勢が出来るので、頻繁にお誘いがあるらしい。
「もう、うるさくてねー」
この歳で、私も一度くらい言ってみたい話!
彼女と一度でも会うと、男性は大概メロメロになるらしい。
お金もある、立派な家もある、時間もあるが、足りないのは、美しい奥さんだけ。
男性は、死ぬまでペッピンさんには弱い。
私は、残念ながら聴く側ではあるが、婆さんの会話ではない。
本人も、年取った感覚がなく、
「喉が弱いから、風邪引いたらなかなか治らないんよ。何でやろ?」
と平気な顔して言うので、
「それって、お年やからと思うけど?」
と言うと、ケラケラと他人事のように笑う。
静かな誰もいない喫茶店でもレストランでも、
彼女がいると、10人位お客さんがいる賑やかさである。
おしゃべりで、屈託無く、楽しい事が好きな人なので、寂しい一人ぼっちの男性が一緒にいたいと思う気持ちがよくわかる。
こういう女性が、男性を幸せにできるのかもしれないと、今更ながら勉強させてもらっている。