小さな冤罪

デパ地下のエレベーター脇の椅子に一組の老夫婦が座っていた。
ボタンが押されていなかったので、カートを引いた私がボタンを押した。
間も無く、到着したエレベーターは満員の上に、車椅子の人が降りて、まだ降りると思いきや、扉が閉まりかけたので、私が慌ててドアを開けようとしたが、中の人が閉まるボタンを押したのか、そのまま上がってしまった。
「あらあら、行っちゃった!中のボタンの前の人は年寄りだったから無理だったかも」
と思っていたら、さっきまで座っていた老婆が老爺に耳打ち。
感じ悪ーと思っていたら、いきなり老爺が、
「あんた!次エレベーターが来たら、ボタン押さなあきまへんで!」と言われた。
「エーッ、私?」
聞こえぬふりしていたら、二人が罪人を見るように睨んでいる。
「これって、冤罪やわ」
と心で思いつつ、エレベーターが着くまで、
「中にいた人が年寄りだったから、開のボタンがわからなかったのだと思いますが?」
と言いたい私であったが、
「ドンマイ、ドンマイ、こんな高齢者の口車には乗らんとこ。偉そうに言っても、偉そうに言わんでも、遅かれ早かれみんな御陀仏。」
なんちゃって思いながら、降りる時には、
「すみませーん」と、自分で閉のボタンを押して、さっさと降りたのである。
取るに足らない、ちっちゃな冤罪の小話ではあるが、喉元まで言い返す言葉はあったが飲み込んだ。
反論すれば、私も誰かのせいにしてしまう所だったかも知れない。
あの傲慢な言い方が、若い人達からは嫌われる要素である。
お願いします、ありがとうの言葉は、高齢者には必須の言葉である
朝から、ボォーとしてたら、何が飛んでくるかわからない1日が始まった。