孤独を楽しむ

夜に、燃えないゴミを出そうと、ドアを開けたら、冷たい雨が降っていた。
テレビの音や、ガスストーブの燃える音にかき消された部屋の中では、外で何が起こっていても分からない。
見もしないつけっぱなしのテレビ、暗闇にしないためのスタンドの光が、独り暮らしの寂しさを紛らわしてくれる。
いつか、訪ねてくるかもしれないゲストの為に、大きなガラスのテーブルの下に、グレーのシャギーの絨毯を敷いた。
懐かしいパリの街を描いたパネルが、小さな部屋には不釣り合いな程大きすぎてはいるが、
真っ白な壁を華やかに飾っている。
目玉焼き用のフライパン、大中小一個ずつのお鍋しかないキッチンで、レストラン並みになんでも作る。
食べさせる相手はいないけれど、お料理好きで良かったと自画自讃。
足が不自由なので、片足立位が取れないが、パジャマのズボンは、壁にもたれての着脱はおてのもの。
飾り棚には、大好きな本と、欠かせないCDデッキ、そして、私を愛してくれた亡きワンちゃんの写真が並んでいる。
一人で生きて、一人で死んでゆく人間の法則の中で、孤独を楽しみ、喜怒哀楽を味わいながらの暮らし方。
温かな小さなリビングで、感謝の日々である。