大切な物も残さない断捨離

義父の代からの家が広いので、オフィス兼自宅仕様の1LDK住まいの私は、入り切らない家具や物を都合よく倉庫のように使用していた。
今年、その家を処分、「買取屋」に依頼したら、結局最後には「引き取り屋」で精算。
0円で、ゴミひとつ残さず、綺麗さっぱり見事なまでの仕上がりで片付けてもらえた。
「買取屋」を頼んだつもりだったので、古くからのアンティークな家具も、骨董的な物も、ブランドの食器類など、大切なものまで売りに出した。
どんな高価なものでも、中古で売るときには、びっくりするほど安いことは知っていたので、
「食器類は全部で5000円です」
20万円ほどの家具が3000円と、どう見積もっても、買取価格が、引き取り捨ててくれる回収費には程遠い。
そんなわけで、引っ越しみたいに一つ残らず、捨てるものも持って帰りますと言われて、
「エイ、ヤー」でオーケーしたのである。
そんな事になるなら、せめてあの食器だけはとっとけば良かったとか、あの飾り棚だけはおいとけば良かったとか、後になって女は愚痴が出る。
三日ほど、執着の強い心はスッキリしなかったが、トラック二台分のものがなくなった現実に、「よかったやんか!」
今、目の前にあるこれっぽっちの物だけが、私の手元に残った現実に大喜び。
「これで、いつ死んでも誰にも迷惑はかけないかも!」
そう思うと、身も心も軽くなった。
大切なものを残して、いらないものだけ捨てるのは、断捨離とは言わない事がよくわかったのである。
自分の身の丈、必要最低限度、大切な物も削ぎ落として行く心の葛藤。
70歳を超えた人間が生きていく中で、本当に必要なものだけが見えて来る。
あれ以来、私の一人断捨離が、今も継続中である。
私の人生のなかでは、あれもこれも、いつも暮らしを豊かにしてくれた物たち。
どうあれ感謝である。