5年間生存率

同じ地域で、同じ病院で、同じ日に、消化器癌の手術をした知り合いがいる。
一人は、胃周辺。
もう一人は、腸周辺。
少し歳の差はあるが、癌のステージは同じくらい。
術後の苦しい時期を乗り越えて、無事退院。
胃癌の人は、若い頃から大食漢でグルメ志向。
大腸癌の人は、アスリートの食生活。
正反対の食生活でも癌にはなる。
五年生存率を、一人だけが超えたのである。
完璧な治療の末に、何故、二人の結果は違ったのか?
同じ街に住み、同じスーパーでの買い物で、私はよくそれぞれの買い物に出会ったのである。
ついつい、カゴの中に目がいき、見事に買う食材に違いがあった。
胃がんの人は、治りも早く、
「何でも食べていいですよ」
とのドクターの言葉に、待ちに待っての以前のグルメ志向に逆戻り。
「食べたかったんですわー」
カゴの中は、華やかな彩りのお弁当や鰻丼や揚げたてトンカツ。
これからは、のんびりと二人で暮らしますと嬉しそうに奥様と、お買い物。
もう一人の大腸癌の人は、術後数ヶ月は、大腸ストマを設置されての退院。
安定すれば、間も無くストマを外す手術があり、かなり不自由な日々である。
この人の買い物カゴには、出来合いのものはなく、脂肪関連は一切摂取しない食生活。
「専門職なので、すぐに仕事復帰です」
と、術前とは変わらぬ暮らしを継続された。
「生きた5年間、元気でいれる自分に感謝です」と、会うたびに言い続けられて、今がある。
亡くなられたご主人のことを、
「好きなものを食べて、好きな様に5年間生きれたから、満足だったと思いますよ」
と、奥様は言われた。
死に方は生き方とはいうが、まだ、宣告されていない私には、答えは出ない。