地域には根ざせない。

太陽も登り、少し身体も温かくなってきたので、近くの喫茶店に、寄ってみた。
「お久しぶりです!」
顔見知りの女の子が、笑顔で迎えてくれた。
半年ぶりに行ったので、話も盛り上がり、
「この地域は、怖いです!」
と、言うのである。
何が怖いかは、分かっているので、
「近所の噂はSNSの拡散より速いもんね!」
と、答えたら、大笑いになった。
人生の中で、仕事の関係もあり、両手の指ではおさまらないほど、引越しをした。
どの街も、離れてみれば、良き思い出もない。
おばあさん達が、朝早くから、どこかの玄関先にいる。
挨拶して、立ち止まろうものなら、ぬけられなくなるので、笑顔で通り過ぎる事にしている。
いくつもの目が、私の背中を追っている。
その後に、何が起こっているかは、想像がつくくらい、こちらも疑心暗鬼になってはいる。
「芦屋でも、そんなことあるの?」
と言う人もいるが、
「同じ人間、何処に住んでても、一緒!」
誰と住んでて、何が起こってるかまでわかる、
この包囲網の発信者は、謎である。
婦人会や老人会に、誘われて入ろうものなら、
嫁姑の不和話から、財産争いの話まで、広がって行く。
コーヒー飲みながらお客さんの地域談義を聞いてる女の子が、怖いと言うのも分からんでもない。
「地域密着、安心できる老後暮らし」
は、遠い話である。
高層マンションの最上階で、天を仰ぎ、街を見下ろす場所に住めれば、巷の話は聞こえてこないかもしれない。