女神のような桜

天気予報の気温を裏切るように、冷たい雨が、桜待つ心を募らせる。
手を伸ばせば触れる場所に、春が立ち止まっている。
温かな日差しの中で、桜の花びらが舞い散る道を、通り抜ける日が必ずやってくる。
雨に打たれて見上げた木の枝には、未だ蕾の姿さえ、見つけられないでいる。
「お母さん、あの春は来るの?」
幼い娘が、寒さに震えながら聞く。
「うん、来るよ!でも、去年と同じ春は来ないのよ。」
と、答えた。
「どうして、同じじゃ無いの?」
「同じ景色に見えるけど、貴女が変わって行くからね」
「フーン・・・」
私が生まれる前から、同じ場所で、同じ季節に満開の花🌸を咲かせる女神のような老木の桜。
幼稚園の帰り、桜の花が取りたくて、飛んでも飛んでも、届かなかった事を覚えている。
あれから長い月日が経ち、間も無く平成が終わると言う。
新しい年に変わっても、いつものように、桜は満開の花を咲かせるのである。