20代の美学

20代の頃の男女共、人生の中で、文句がつけようがないくらい美しい。
嘘だと思うなら、しまい込んだ引き出しのなかから、セピア色の写真を見つけて見てください。
真っ黒で豊かな髪、澄んだ瞳、引き締まった身体、そして、屈託のない笑顔。
生きて、まだ20年、多少はやんちゃもしたし、親にも内緒のドキドキも経験したけれど、
心に醜悪なシミなどついてはいない。
人生の中で、最も美しいのが20代である。
自信に溢れ、希望に向かう道しかない若者達の歩く姿に、立ち止まる姿に、今の私たちの様な老人が、我が歴史を振り返りながら見とれている。
混み合う電車の中で、若いお嬢さんが、
「どうぞ、お座りください」
と、躊躇なく声をかけてくださる。
また、列車や飛行機の中で、若いお兄さんが、
「荷物を棚にあげましょうか?」
と、逞しい腕で、手伝ってくださる。
こうべを垂れて、
「ありがとうございます」
と、感謝を述べる。
私にも、ずーっと昔、こんな場面があった事を思い出す。
目の前に若い頃の私が、優しい笑顔で目の前にいる。
どんな時代になっても、人間の中にある
「人を想う気持ち」は、延々と続いている事が
嬉しい。