ブラックコーヒーでお月見を
今宵のあなたは、果てしなく遠い。
高く、深い、聖夜の中で、
神々しく、近寄り難く、輝いている。
窓を開ければ、
秋の風が、あなたの光を届けてくれる。
全ての人々の悲しみを抱きしめる。
月明かりの中で、
一瞬の生命力が蘇り、魂が浄化されてゆく。
前代未聞の東証の売買停止も、
あなたの仕業に思えてしまう。
「NEVER STOP」のシステムまで、
止めれるのは、あなたの奇跡。
今夜くらいは、
「お月様を、見上げて」
と、かすかにあなたの声が聴こえて来る。
朝になれば、
あなたのことは、すっかり脳裏から離れて、
現実の狭間の中で、我を忘れてしまう。
夜毎、あなたに会うたびに、
私の美学と美意識が、再生されてゆく。
数え切れないほどの夜を越えて、
流した涙を知っているのは、あなただけ。
暗闇でしか会えない切なさに、
一度くらいは、
真っ昼間に会いたいと、
叶わぬ夢はあるのです。
ススキを飾って、月見団子に日本茶の
年寄りくさいのは、やめにして、
今宵は、
ブラックコーヒー飲みながら、
あなたと、眠らない夜を過ごしていたい。