聖夜まで生きて

街の中を、粉雪が舞い散り、真っ白に浄化してゆく最も美しき聖夜、クリスマスイブの日まで、貴方の命を繋ぎたい。
その日が来たら、「頑張って!」とは、二度と言わない。
神様の愛の中で抱きしめられて、静謐な優しい時間を味わいたいと、願っている。
それぞれが、生きる道を選び歩き出した別離の日から、20年の月日をこえてきた悲しみは、
貴方としか分かち合えない。
もはや、言葉も交わさず、心に触れることも無いけれど、今は、貴方のそばにいる。
離れて暮らした日々の中、貴方が、もし苦しかったならば、私もまた苦しかったと思う。
貴方が、楽しかったならば、私もまた楽しかったのである。
一緒にいてもいなくても、夫婦という名のもとでいる以上は、同じ様に味わうのだと思う。
このままいけば、大切なものを失うと思っていたものは、何一つ失なってはいなかったことや、相手に恨みは募るだろうと思っていたが、
何一つ恨みなどなかったことを、知ることとなったのである。
愚かな親が離した手を、しっかりと両手で繋いでいた人がいた事を、忘れた事はない。
この世で二人が残した唯一のものは、
慈悲深い我が子であった事を、死の瞬間まで味わい、感謝の言葉で旅立てるのである。