人間の嫁がいい。

外出先からの帰り、近所の知り合いから、
「お宅はいいですねー。息子さんがいはるから、幸せやわー!」
と、声がかかったのである。
「はあ、まあ、ありがたいと思ってます」
と言いながら、ちょっと待って、貴方にも息子さんがいたはず?
と、聞き直すと、
「何言うたはんのん、うちは嫁がいるから、いないのんと一緒!」
私の息子は、40を越えて結婚していないので、皮肉かしらと一瞬思ったが、そうでもないらしい。
女の人のここだけの話は、あまり聞きとうないが、よほど腹に据えかねたものがあったのか、
言い出したら止まらない。
お正月には、お孫さんも来て、一家三代でお出かけしたり、お誕生日にはプレゼント持って行ったりと、絵に描いたような仲良し一家に見えてはいましたが?
ここだけの話は、相当な内容である。
自分も嫁であることを忘れて、よそ者の様に、姑は嫁を扱うことが、周りを見てもほとんどである。
「うちの嫁は・・・」
とっても良い嫁!話は滅多に聞かない。
おかげさまでと言っていいのか、うちには嫁が存在していないので、言わなくて済んでいるが、いたら、やっぱりみんなで嫁談義になるのだろうか?
昔の様に、〇〇家に嫁いで来たから、家系を守ろう感など、まっぴらないのである。
それを強いるのも、いまどきおかしな話ではある。
しかし、我が可愛い息子が実家のことに振り向きもせず、仲良し家族になっても気に入らん!
だからと言って、夫婦不和の話が聞こえてくるのもかなわん!らしい。
若者たちの突拍子もない考えに、賛同して面白がってる私も、そのうち、宇宙人みたいな嫁が来たら狼狽えるのだろうか?
或る日突然、
「僕のお嫁さんです」
と、AIロボットを連れて来そうな息子だから、せめて、血の通った女性を連れて来て欲しいと願っている。
自分もそうであった様に、女同士の喧嘩をしたり、ひっついたり離れたりしながら、気がつけば自分が中心の家になり、平和が継続されるのである。
未来永劫、嫁姑の関係だけは、普遍である。