なんだか、目がおかしいと感じたのは、家事が終わり、ホッとしてソファに腰かけようとした時である。
顔の周りに、キラキラと歯車状の光が、無数に現れた。
前にも、何度か経験もあり、目をつぶって休めば治るだろうと気にしなかった。
しかし、今日のは以前のキラキラとは違って、
私の頭を覆うように、数が増えて来たので、
何だか生き物のように感じ出した。
透明の光なので、手で振り払う事はできず、
私の動く後をついてくる。
気持ちが悪くなって来たので、落ち着かず為に、安定剤を飲んだ。
お医者さんに行こうかと思ったが、
「いや、待てよ。どうなって行くのかを、見て見よう!」
と、腹を据えた。
自律神経も不安定で、パニック障害も発症することもあり、正体見たり!を試して見たかったのである。
歯車型が、そのうち入道雲みたいに、膨れ出して、私の頭を触り出した。
「幻視、幻覚?」
前から、人の訴えは聞いていたが、ちと違う。
刀を腰に刺した侍でもなく、イノシシの親子も横切らず、壁から爬虫類は出て来ない。
認知症の人達の見るものは、はっきりしたものなので、モヤモヤしたものではないようだ。
とすれば、眼が悪いか、脳の誤作動?
この歳になると、或る日突然、家の中に人が立ってたりするらしい。
どう間違っても、私の前にはイケメンの男性は出て来ないだろう。
なぜなら、自分の脳の中には、イケメンと関わった過去がないので、記憶やから出現しない。
なんやかんや考えているうちに、キラキラ歯車も、煙も消えていた。
「この婆さん、驚かないから、面白ないわ!」
と諦めて、引っ込んだ。
人に、こんな話をすると、身を引いて、
「認知症ですか?」と聞くので、
「健常な頭でも、これくらいはありですよ」
眼科に行ったら、
「老化による光視症」と、診断された。
老化現象は、どれだけ病気を生み出すのだろうか?