心の中の🌸一輪

だまし討ちのような寒の戻りである。
桜、サクラと、珍しくもないことに、テレビはから騒ぎ。
芦屋川の桜も、花一輪、姿は見せず。
人間の期待はずれなど、気にもしないで、本当の春が来るのを、待っている。
自然は、鐘や太鼓で騒ごうが、人間の思い通りにはならないのである。
しかし、決して約束は破らないのである。
学校の行き帰りに見た桜、通勤電車の車窓から見た桜、子供達と手をつないで行った公園で見た桜、新しい門出に見た桜、心を病んで部屋の窓から見た桜。
悲喜こもごもの人生の中で、日本人なら、一度も桜の花を見たこともないと言う人はいないだろう。
枝の先まで咲く満開の見事な桜は、人々の喜びであり、大切な人との美しい思い出である。
粉雪の舞う冷たさの中を、悲しみを抱きしめて、冬枯れの桜並木の下を駆け抜けた日々。
「春が来れば、きっと咲く!」
と信じて、今がある。
生きて行く中で、苦しい時も、悲しい時も、寂しい時も、人々の心の中に、桜の🌸一輪が咲いている。