介護なき介護

ドアを開けると、いきなり、
「あんた、誰!」
と、怒鳴られる。
「〇〇事業所のヘルパーです」
など、言おうものなら、
「いらん、いらん、帰ってんか」
と、言われるのが落ちである。
認知症、及び、その疑いがある高齢者は、
その日、その時間、その都度変容するので、対応は難しい。
家族が同居の場合は、とりなしてもらえるが、独居の場合は、ヘルパーさんも苦労である。
決められたケアを、時間内に、見事に遂行できる人は数少ない。
新米のヘルパーさんは、暴言に驚き、
「介護、拒否」として、触らず帰宅する。
認知症の、一番わかりやすい特徴が、
「拒否、否定」なのに、帰ってどうする。
とはいえ、家の中に入るまでが、勝負である。
出来事が継続していないので、さっき怒っていでも、時間が経てば普通の会話にかわる。
「今日は帰りますね、さようなら」
と言って、暫くしてから、
「今日はー、お久しぶりですー」
と再チャレンジする。
決して、無理も指示もしてはならない。
むしろ、こちらから悩みを聞いてもらい、
困っているのでお願いすれば、受け入れてもらえることがある。
なんだかんだと、一緒にいる時間が過ぎて、
そして最後に、
「いろいろ、助けて頂き、有難うございました!」
と、こちらが言えたら、見守り介護は成功である。