お金がある時ない時

ショーウィンドウに飾られていた車が、すこぶる気に入って、
「これ、下さい!」
と、ドレスを買う様にその場で買った。
説明も聞かず、試乗もせず、営業マンは唖然とした顔をしていた。
それから、10年、私の足となって、日本国中を走り抜き、赤いランプがついて、廃車になった。
人の車では乗ったことはあったが、一度は、ホロ付きのスポーツカーが欲しかった。
四人乗りで、その上車椅子も、ワンちゃんも載せれる優れもののヨーロッパ車であった。
次々と仕事に追われ、人生の中で、充実した時期であった。
この車と共に、喜びも辛苦も味わう、様々な歳月を越えてきた。
ビジネスが低迷し、会社の存続が厳しくなってきた時には、
「私の持っているものを、全て売ります」と、
お金に変えた事もあった。
お金が潤沢にあった時に購入したものは、
いい値段で売れた。
すっからかんからのスタートである。
無から有にする時には、新しい発想が生み出され、計画と実行が繰り返される。
ファーストフード店の食べ物は、私の命を繋ぐほど、ありがたい事を味わった時期である。
安い食材で、食べたい物、美味しい物を、毎日の様に考えたので、食費は数段落としたにも関わらず、食卓の豊かさは変わらない。
お金は、ある時は、広い視野で私を満足させてくれるし、ない時は、私を深い知識の宝庫に導いてくれる。
お金のある時も、お金のない時も、どちらも私の大切な人生である。