ちょっと、休憩させて。

頭の中が真っ白なまま、3日が経っていた。
つけっ放しのテレビが、だまし討ちのような雪の舞う春を、映し出している。
珍しくもないことを、何故こんなに騒ぐのか分からない。
なにが起こっても、必ずくる春爛漫。

折りたたみのソファベッドを広げたまま、
部屋着のまま、1日が過ぎて行く。
なにも考えられないことを、ずーっと考え続けていた。
「私らの年代は、家にいたらボケ出すからね」
友人の言葉を思い出した。

朝のカフェオーレで、脳が目覚める。
指示命令が発動されて、ロボットのように次々と用事をこなして行く毎日に、嫌気がさした。
「ヤンピヤンピ、もう、生きてるのがアホらしいわ!」
機械を止めた。

自らの軌跡が、走馬灯のように蘇って来た。
幸せの証が、どれくらいあったのか、思い出せないでいた。
「ポトン」と、幸せが手のひらに落ちて来たことなど、一度もなかった。
だから・・・努力するしかなかった人生。

100年生きても、幸せにはなれませんよ。
雨のように、降っても来ないし、
ほっといても、咲く花でもない。
自分の力で、涙を止めて、傷を癒し、立ち上がる作業を繰り返して、やっとここまで。

ずいぶん歩いて来たように思って、振り返ってみれば、
「えーっ!まだ、こんだけー!」
70年も歩き続けたのに、到着点は気が遠くなるほど、まだ先にある。

だから、
「休んでいいよ。大丈夫!」
と、優しい私が呟いた。
人間として成長するには、まだまだ道のりは遠いことを、知っている。