高度成長時代の落とし子

「まず、1日目は、ホテルでゆっくり、

ラウンドは、次の日よ!」

貫禄のあるリーダーらしき女性が、

ゴルフ旅行の予定を報告している。

 

コロナが少し落ち着き、ご無沙汰の蕎麦屋での

光景である。

どう見ても、高齢者ではあるが、

その出で立ちは、「お婆ちゃん」ではない。

 

若い娘の様に友人同士で、「チャン」付けで、

会話が弾む。

「このお汁美味しいわー!飲んでみて!」

と、仲良し風景。

 

それぞれのまとめ役のリーダーが、

噛んで含むように、

「今週の予定」をつたえるが、

其々勝手に喋って、「聞いてへん!」のである

以前の日本の状況なら、微笑ましき風景である。

 

しかし、この方々の子供や孫の未来が、

どうなるかの、世界的問題が起こってる時に、

すっかり、お忘れのご様子。

同じ年代ではありますが、眉を潜めてしまう

 

終戦の最中に生まれた、私たちの年代は、

食べるものも、着るものもない幼少期から、

今日の経済大国にまで成り上がった、

時代の落とし子であった。

 

敗戦後、私たちの親は、絶望と辛苦を味わい、

その胸に抱かれた子供達を守る為、

反抗のそぶりも見せず、

アメリカに、屈服したのである。

 

「お婆ちゃんの幼稚園の写真見せて!」

と、孫に言われても、

「お婆ちゃん、幼稚園行ったかしら?」

あったとしても、白黒のセピア色。

 

日本のどん底からの急上昇のグラフと共に、

私達は、成長していったのである。

 

中学生の頃には、アメリカナイズされた物や、

映画や雑誌が溢れかえっていた。

母の手作りの洋服や、食べ物が、

突如、七色のドレスに変わり、

甘いショートケーキに変わっていった。

 

子供は産めよ増やせよの時代で、

次々と兄弟姉妹が増えて、成人した頃には、

それなりの持ち家に住み、親の苦労も知らず、

皆、高学歴の大学まで行かせてもらった。

 

男子は企業戦士になり、

女子は、お見合い結婚で専業主婦。

アメリカの息がかかった自由の国の中で、

追い風に乗った成功者も、多くいる。

 

親に守られ、夫に守られ、勝ち得た暮らし。

ひょっとしたら、この年代の女性が、

一番やりたい放題、言いたい放題、

だったかも知れない。

 

「最近の若いもんは・・・」

「今の嫁は、ほんとに・・・」

と言いながら、女帝の座を獲得したのである。

「戦後、靴下と女性は強くなった!」

と、言われた時代の張本人である。

 

誰のせいでもなかろうが、

良き時代は終わり、氷河期の時代になる。

そんな最中に、昔の母のような背中を、

私達は、子供や孫に見せていけるかは、

残念ながら、疑問である。