夕食は、てんやもん

60年ほど前の話、

まだ、大きなスーパーもなければ、

ショッピングモールもない時代。

 

阪急芦屋川の川沿いに、

小さなお豆腐屋さんがあった。

古びた看板に、大きな字で、

「とうふや」

と、書かれていた。

 

山の手で、不便な所ではあったが、

手作りで繁盛していた。

「お豆腐、一丁、買ってきて」

と、母に言われて、

10円玉を何枚か握らされ、

その上、お鍋を持たされた。

 

タッパーなど、便利なものはなく、

私は、それを持たされるのが、

子供心に、恥ずかしく、

スカートで隠すように、一目散に、

豆腐屋さんに、走り抜く。

 

行きは良い良いだが、

帰りは、お鍋にお豆腐とお水。

隠しようがない。

 

おばさんが入れてくれるお水を半分捨て、

山の手の坂を、また、一目散で走りぬく。

「あーあ、貴女が行くと、

なんで、お豆腐がグチャグチャなの?」

怒らない母の言葉に、

悲しくなった思い出がある。

 

20年ほど前、

仕事でフランスに行ってた頃、

パンも玉子もケーキも、一個から、

ハムも、カットは一枚から、

朝市や、マルシェで買うことができて、

紙袋も、ポリ袋もなく、

紙一枚でくるりと巻いて、渡された。

 

「へぇー、合理的!」

と、その頃から無駄がないことに、

びっくり!

その上に、綺麗なパリっ子が、

お鍋を出して、

「ここにシチューを入れて」

入れ物を持っていくと、安くなるのである

 

日本では、考えられないほどのラッピング。

綺麗な箱に入れ、

ご丁寧に、持ち歩き時間の保冷剤、

その上、包装紙で包んでくれて、

立派な🛍で、持ち帰る。

 

どれだけのゴミが出るか!

綺麗だけれど、なんか無駄!

 

今や、日本も、コロナによって、

有名なレストランも、高級和食も、

テイクアウトが大流行。

嫁も姑も、楽チンになりました!

 

「だから、これからは、

綺麗な箱も、大層な🛍も、やめましょう」

お家から、入れ物持って、紙袋持って行けば、

地球温暖化に、協力できて、

外食は、前ほどできなくなったけど、

家族で、「てんやもん」食べてる姿も、

微笑ましい。