「巴里乞食」と、呼ばれて

オーケストラが、

奏でるクラシックを、

聴くのも、観るのも好きである。

 

これぞ、教養と思えるほどの、

歴史ある文化、

演奏する人達の、

敬意を表す、白黒の礼装。

 

ヨーロッパに行くと、

休日には、当たり前のように、

人々は、演奏会に行く。

 

街の風景も、造形物も、

歴史が身近に感じられ、

人々の心の中に、

繋がった命を、大切にする感性が、

横たわっている。

 

美しい音楽、

伴った服装に、身を包み、

魂を、元返してゆく時間、

幻想的な空間の中で、癒される。

 

近代的な、

高層マンションは、無いけれど、

外観は、華美でなく、シンプル。

小さなアパルトマンの、

階段を、靴音が響く。

 

お部屋は、

思うほどに狭くはなく、

玄関を開ければ、温かな灯りと、

迎える人への、優しさが、

伝わってくる装飾が、なされている。

 

通されたリビングには、

何百年と、

使いこなされて来た、家具が置かれ、

時間を遡り、別世界へ誘われる、

 

日本を、脱出して、

この街に、たどり着いた頃は、

「巴里乞食」と、呼ばれていたと、

画家の友人は、笑って言う。

 

どこまで行っても、

お金は無いけど、

パリで過ごした「半世紀」が、

最高の宝物である。

 

彼が、描き続けた、

数えきれない絵画の中に、

その証が、見えてくる。

 

お金もない、

才能もない、

支援者もいない中で、

生き抜いて来た強さが、

笑顔の中に、見え隠れしている。

 

揺るぎない、

自分の居場所を、見つけた人である。