元家族

子供が4人もいるのに、子供部屋が3部屋しかない実家に暮らしていた。
古い家を立て替えたにもかかわらず、一部屋足らない。
親の都合で、そうしたらしい。
男子は兄1人、特別扱いでいつも1人部屋。
後の女子三人が二部屋を、一年ごとに変わる羽目に陥る。
六畳一間を半分に分けるには至難の技である。
なぜかダブルベットが部屋を占拠していたので、それだけで部屋半分を占めている。
私は、ベットの上で本を読んだり、勉強?したりするのが好きだったので、いつも同居する姉や妹に頼み、ベット側をゲットしていた。
自分の部屋にただいまと帰っても、ドア側の姉のテリトリーを通り、自分のベット部屋に入らなければならない。
なんとも奇妙な暮らしが、誰かが家を出るまで続いたのである。
カーテンで仕切ってはいたが、そのうち、着る物持ち物が散乱し始め、ドアすら開かない状態になる。
「今時の若い娘は片付けもできない!」
とは、偉そうには言えない日々であった。
そんな育ち方した私が、今は、かたずけ魔の様になっている。
不必要な物は買わない、置かない。
いらなくなったら、売るか捨てるか。
どこの引き出しを開けても、整理整頓。
になったのは、あの頃の経験から学んだのかも知れない。
大家族の中の不自由さを味わい、思い通りにならない事に、お互い我慢をしながら過ごした時間が、今の暮らしのスタイルを作った様な気がする。
今は、小さなワンルームの部屋ではあるが、充分空間のあるシンプルな暮らしをしている。
誰かが階段を駆け上がる音も、キッチンで母が食事の用意をしている食器の音も、父の大きなくしゃみの音も聞こえない静かな暮らし。
目を閉じれば、家族と暮らした賑やかな声が聞こえて来る。
もう、離れ離れに暮らしてはいるが、あの時の賑やかな家族を懐かしく、時々、思い出すことがある。