期限つきの寝たきり暮らし

窓際に置かれたソファベッドに横たわると、

換気のために開けられた窓から、

優しい風が、カーテンを揺らしている。

 

真っ白だった天井も、いつのまにか、

うっすらとグレーに、変色している。

「この家に住んでから、天井なんて、

見たこともなかったっけ?」

 

目覚めた朝、

運動不足で、少し拘縮気味の手足で、

リハビリ代わりの家事をこなす。

頭のてっぺんから足の先まで、

若い時の様に、一瞬には目覚めない。

古びたクラシックカーの様に、

ゆっくりとエンジンが回りだす。

 

国を挙げての自粛宣言は、

老いていく身体に、拍車をかけてゆく。

「生き生きとした老後」

「人生100年!」

年老いていくことに、抗ってきたけれど、

今は、静かに家にいて、

コロナの嵐が過ぎ去る時を待っている。

 

「ピンピンコロリで死にたいわー!」

と、いつも言っていた友人達が、

息を潜めて、自粛生活。

「延命治療なんか反対!」

という言葉はどこかに消えて、

医療現場は、延命治療のエクモが足らない。

「ピンピンコロナ」にはならない様だ。

 

老衰で死ぬのも、癌で死ぬのも、血管障害で、

死ぬのも、コロナで死ぬのも、

高齢者が受け止めねばならない事実である。

 

私がコロナにかかったら、

「延命治療はしないでくださいね」

と、ドクターに言えるかしら?

 

気がつけば、夜になっても、

ソファベッドに寝転んで、

窓から見えるお月様を眺めているのです。

祈りながら、願いながら、

期限つきの「寝たきり暮らし」を、

過ごしている。