涼しさを買う

阪急芦屋川の駅を北に降りると、

西へ一方通行の商店街がある。

 

サンモール商店街。

誰がつけたか知らないが、

私の小さかった頃は、

この地域の小さな市場であった。

 

家は山手にあったが、走れば5分。

時々、お使いに行かされた。

その頃からのお店も住民も変わったが、

ちっとも、華やかにも、賑やかにも、

ならない。

 

理由はJR芦屋近辺に大丸もスーパーも、

揃っているので、皆そこに行くからである。

 

8時を過ぎると、駅から西方向へ帰る人も、

まばらで、店もほとんど閉まり、

なんだか、鄙びた温泉街みたいである。

 

そんなゴーストタウンにも、

小さな花屋さんが、店を開いた。

ケルトンのがらんとしたお店には、

普通の花屋さんのように、

色とりどりの花は、一切ないのである。

 

一人で抱えられるくらいの白い紫陽花、

後は、添えに入れれそうな緑の草木のみ。

たまたま、土曜日にしか空いてない日に、

前を通ったので、入ってみた。

 

40代位のナチュラルな感じの女性が二人、

「いらっしゃいませ」も言わない。

恐る恐る、

「お花、購入できますの?

アレンジしていただくの?」

と聞いたら、

「一本からでも、いいですよ」

と、小さな声で言われた。

 

お花だけ売ってるのかと思えば、

店の奥の棚に、手作りパンが、

少しずつ置いてある。

 

なんだかユニークで、

無印良品」みたいなおしゃれな店の、

片隅にあれば、もっと映えるのになー、

とも、思ったりした。

 

お魚並べて売ってる昭和の魚屋さん。

小さなドライクリーニング店、

そんな並びに、異空間の花屋さん。

 

とりあえず、5種類くらいの花しかないので、

白い紫陽花を中心に、アレンジして購入。

 

開店は土曜日だけ

お花の種類は、5種類ほど、

そして、こんな寂しい商店街に開店。

 

なんだか分からないけど、

私にとっては、近くに花屋ができて、

とりあえず、嬉しい!

若い女性のお店は、応援しますね。

頑張ってください」と一言。

 

家に帰り、長いガラスの花瓶に、

早速生けたら、

一本だけ買ったはずの白い紫陽花が、

二本も入っていたのです。

「ありがとう」と、つぶやいた。

 

シャンデリアのスタンドの光に照らされて、

エアコンの風で、涼やかに揺れている。