私達の街

富裕層が多く住むこの街を、

誰もが、

「綺麗な街」と、信じてる。

 

都会にふさわしい、

手入れされた、清らかな川が流れ、

川を渡る様に、建てられた、

小綺麗な、阪急の駅がある。

 

私学へ通う子供たちの、

「送り迎えのお車」が、

まるで、外車ショーの様に、

並んでる。

 

深い緑の山の手も、

青い海の見える、埋立地にも、

シックで、美しい瀟洒な家々が、

ヨーロッパの街並みにも、劣らない、

雰囲気を醸し出している。

 

JRの駅前には、

唯一のデパートと、ファッションビル、

「普段着くらいは、ここで揃うわ」

と、さりげなく、友人の言う通り、

とびきりの高級食材と、

ブランドファッションが、手に入る。

 

どう見ても、貧困とは無縁の

幸せを絵に描いたような人達が、

行き交う街である。

 

ステータスに見合ったこの街に、

夜の繁華街はない、

よって、奇抜な色の看板もない。

立ち飲み飲食もない、

よって、お父さんは、

どこにも寄らず、

「真っ直ぐお家に帰る」街、

 

「私の街」を、汚さないでね、

「私の道」を、通らないでね、

この街に入るには、

「特別なパスポート」がいる様に、

感じてしまう。

 

幼い頃、

この川で、お魚みたいに泳ぎ、

この山で、ウサギを追いかけた。

自然の優しさに、溢れていた村が、

いつのまにか、

創られた箱庭の様な、街になった。

 

「私の街」ではない、

「私達の街」になれば、

格差のない未来が、見えてくる。