6月の風が吹く

夜の帳の中、

湿った、6月の風が、

走っている。

 

庭の地植えの、紫陽花が、

雨に打たれて、咲き誇る季節を、

間もなく、迎える。

 

誰もが認める、

華やかで、美しい、

5月の「薔薇」も、

残り香の中で、終わりを告げる。

 

明るい太陽の日差しを、

避ける様に、

ひっそりと、咲き始める、

影の様な花、紫陽花の季節。

 

儚く、切なく、

憂いを感じる、謙虚な女性を、

想像させるが、

花言葉は、

「移り気」「冷淡」「無情」。

 

吹く風で、

色を変えてゆく紫陽花を、

女性の心模様に、喩えた言葉である。

 

美しすぎて、

思わず、指で触れると、

棘のある、薔薇の花言葉が、

意外にも、

「愛」と「美」である。

 

相対の様な、「薔薇と紫陽花」

眩しいほどの美しさにも、

清楚な佇まいにも、

密かに合わせ持つ、「棘と冷たさ」がある。

 

花言葉の起源は、知る由もないが、

「棘も冷たさ」も、

女性に、与えられた、

唯一の武器であり、

守るべき尊厳として、

私は、捉えている。