「貴方の記憶」が、消えてゆく

早めの朝に、

大急ぎで、身支度して、

「耳鼻科」へ、

 

コロナ第8波が、

蔓延している中、

行きたくはないが、致し方なしである。

 

何しろ、

首から上の、不具合は、

高齢者にとっては、

ほっとけない症状である。

 

歯も、鼻も、目も、耳も、

肝心の脳と関連が深い。

貴方の場合は、

耳の病気ではなく、

脳神経外科へ」と、言われたら、

「万事休す」である。

 

高齢者が、集まると、

認知症」の、話題に、

花が咲く。

 

数時間一緒にいると、

帰る頃には、

誰かが、既に、

「軽度認知症」と、分かってくる。

 

普通の高齢者も、

多少、認知症の高齢者も、

集団の中では、

何ら、支障もなく、

「楽しかった!」と言って、

別れてゆく。

 

気が、遠くなるほどの、

年月を越えて、

肉体も、精神も酷使して、

気がつけば、

「あっちやこっち」

錆びついたり、壊れたりは、

当たり前。

 

宮沢賢治が、書いてる様に、

「雨にも負けず、風にも負けず」

走り抜いた道を、振り返れば、

「つぎはぎだらけ」の、我が姿。

 

ここまで、生きて来た事を、

「よう、頑張った!」と、

ゴール出来た人達と、

喜びを、分かち合う。

 

脳の中で、

「記憶の正体」を、探しても、

「貴方の記憶」が、消えていく、

切なくて、悲しいけれど、

 

温かな、懐かしさが、

握りしめた、

貴方の掌から、伝わってくる。