「おひとり様」のお正月

いつの頃からか、

お正月のお飾りや、鏡餅は、

飾らなくなった。

 

代わりに、

「白いシクラメンの花」が、

部屋の隅っこで、

静かに、咲いている。

 

「おひとり様」のお正月は、

シンプルに、なった。

老舗の名店の、「一人おせち」も、

小さいけれど、「一丁前」

 

後は、

代々、受け継がれた、

「お雑煮」と、

赤のグラスワインが、揃えば、

「おめでたい、お正月」が、

出来上がる。

 

ふと、

「これが、最後のお正月かな」

と、頭をよぎるが、

どうあれ

70数回目の「お正月」を、

迎えれた自分に、「おめでとさん」

 

独居老人ゆえの、

言い訳で、

お客さまには、ご遠慮頂き、

お年賀の、ご挨拶は、スマホでメール、

お年玉は、簡素化されて、口座振込、

 

何十年と、

同じことの繰り返し、

死んだら、誰かが引き継ぐが、

生きてる間は、実家に集まり、

体力も使い、お金も使う。

 

「足腰弱り、頭もボケて」と、

やんわり、断り、

「おひとり様お正月」を、

静かに、味わう。

 

瞳を閉じれば、

窓の外には、

粉雪が、舞って、

暖かな部屋の中には、

大きなテーブルに、並んだお料理、

幼かった子供達の、

楽しそうな声が、聴こえてくる。

 

楽しかった思い出は、

歳を重ねても、

決して、忘れることはないのである。