「杖も持ちたく無いし、車椅子も嫌!」
と言う人がいる。
恥ずかしいとさえ言う。
「それって差別用語になるよ」
私は15年ほど前から、股関節が悪く、
手術を選ばなかったので、足を大事にした。
不安定な時は、杖も持ったし、
遠方に出かける時は車椅子を使用した。
福祉用具は、使用することで自立になる。
自分の身体を大切にするための小道具である。
歳と共に、不自由にはなるが、
進行は遅めたので、良かったと思っている。
嫌がる人の心理は何かといえば、
特に女性に多いが、
格好が悪いと思っている。
友人からは、仲間外れになると思っている。
そして、何より弱者に思われたくない。
私達より一世代上の高齢者は、
今の、80代90代は、一部を除いて、
若作り競争はしない。
しかし、60代70代は、強烈である。
お金に物言わせてのブランドファッション、
エステにプチ整形には事欠かない。
スタイル保持に、ジム通い。
ボケ防止に、カラオケ、麻雀。
お婆ちゃんとは言い難いスケジュール。
急に誘うと、
「顔にヒヤルロンサン入れに行ってから」
と、答える。
歳を考えて、化粧を徐々に落としていくが、
今時は、元から掘り返す施術である。
時々、頬っぺたがアンパンマンになるらしい。
顔は直せるが、身体は正直。
あちこち傷んで、一人で外出は厳しくなる。
それでも、「年寄りみたいにはなりたくない」
と、抵抗する。
私は、早いうちから「弱者」になる準備を、
して来たから、皆優しく面倒見てくれる。
弱者になる事で、人の視線や思考が、
良く見えるようになる。
健常な時の自分が、いかに傲慢だったか、
少しは謙虚な人間になろうと気をつける。
どんなに抗っても、老化には勝てない。
そんな身体に、心を寄り添わせて、
穏やかな老後を、過ごしていきたい。