お母さんの白い日傘の中に、妹がいる。
片手しか空いていない手を独り占め、
末っ子の妹は、お母さんから離れない。
姉と私は、いつも、後ろを歩きながら、
「私も、お母さんと手を繋ぎたい」
と、二人は思っていたけれど、
「私たちはお姉ちゃんだから大丈夫」
と、頑張った。
優しい母は、三人の娘たちを、
分け隔てなく、愛してくれた。
だから、私達も妹を愛していた。
長女の姉は、臆病だけど親切で、
次女の私は、自由奔放でおしゃま、
三女の妹は、いつも笑ってる可愛い子。
生地問屋の長女に生まれた母は、
実家から、売れ残った綺麗な生地を貰い、
三人の娘達の洋服を、デザイン違いで、
よく、作ってくれた。
少し大人っぽいフリルは、姉。
袖にも裾にもいっぱいのフリルは、私。
ちっちゃくて、可愛いフリルは、妹。
セピア色の写真の中で、
ドレス姿のお嬢様たちが、並んでる。
突然の、母の死で、
いつも一緒で、いつも笑ってた、
三姉妹の幸せは、幕を閉じたのである。
身体も、心もバラバラになって、
六十年の月日が、過ぎていった。
娘たちに無関心な父との戦いの中で、
悲しすぎて、泣くことを忘れ、
お互いの心を慮ることも出来ず、
温もりに寄り添えず、
歳を重ねて、今がある。
今も、母は、天国で泣き続けている。
少しずつ、あの頃の、母の愛を思い出す。
何もかも、失くしたはずなのに。
私を心配する優しい姉の中に
愚痴も言わず、一人で生き続けた妹の中に、
母が生きている。
そして、諦めず、貫き通す私の中にも、
母が生きていた。
三姉妹で生まれた意味を知り、
三姉妹の中の母が、見守り、
ここまで生きてこれた事に感謝を、
しなければならなかった。
母の血が、脈々と流れている、
姉と妹に親孝行出来るかもしれない。