秋色の日々

夏を追い越した秋の風が、

少し汗ばんだ襟元を、通り過ぎてゆく。

 

蝉の泣き声も、すっかり消えて、

赤トンボの群れが、飛んでいく。

 

クーラーを止めて、

開け放した窓から、夜の冷気が心地良い。

用意万端整えば、中秋の名月が現れる。

 

音のない静謐な部屋の隅々までも、

秋色に染まりゆく。

待ちに待ったはずの秋なのに、

悲しい心が、片隅にいる。

 

決着のつかないままに、四季はめぐり、

「ああ、暑い!」、「ああ、寒い!」

と、言いながら、時間は過ぎてゆく。

 

不安定な日本の中で、

経済は低迷し、ウイルスは増幅し、

災難、災害との追いかけっこの暮らしでも、

命だけは、変わらず輝いている。

 

「おはよう!」と言えば、

「おはよう!」と返ってくる言葉に、

励まされての日々である。