「お金を送ってもらえませんか?」
若い頃、
まだ、スマホなど無かった時代である。
親しい人から、切実なお手紙が来た。
私自身も、裕福でもなく、
生きるために、働いていた頃である。
よほどのことだと思った。
「いくら?」
とも聞かず、理由も聞かず、
出来る限りの金額を、
送金した。
今から思えば、
「雀の涙」ほどの金額であったと思う。
農業を学ぶため、
食事だけは無料の農家で働き、
冬には、雪が積もり、
ストーブもない。
「こたつが欲しい」
と、言っていた言葉が、
頭から離れず、思い出しながら、
お金を封筒に、急いで入れた。
裕福な家で育ち、
大学まで進学したが、
自分の「夢」の為に、
親の反対を押し切り、家を出た人である。
紛れも無い「お嬢様」が、
最後の500円玉を握り締めて、
「お金を貸してください」
など、口が裂けても言えなかったはず。
切ない思いで、
涙が止まらず、
「お金」に腹が立った!
両親の家に帰れば、
溢れるばかりのお金があり、
言う通りにすれば、
なんでも手に入るはず。
それでも、「夢」を諦めなかった。
すぐに怯む私からすれば、
女神のような女性である。
「私も、そうなりたい!」
と、憧れがあった。
たかが、お金、
されど、お金、
私にとっても、彼女にとっても、
大切なお金ではあるが、
それ以上に、大切な信念があった。
「頑張って!」
と、応援し、支援する事が、
私の役目だと、思っていた。
そして、
数十年を経て、
彼女は、沖縄の離島で、
大いなる自然の中で、農園を作ったのである。
そして、私は、
「支援」「応援」に
携わる仕事に、就いたのである。