鉄のハンドバック

昔から

「鉄の女」ならぬ、

「鉄のハンドバックを持つ女」

と、言われていた。

鉄のように重いバックである。

 

チョコンと可愛い手提げのバックなど、

持ったことはなく、

冠婚葬祭、パーティーに至るまで、

あるブランドの大きなバックである。

 

周りは、私ではなく、

そのバックに敬意を持っているので、

一度も、注意されることもなく、

通過してきた。

 

普通の人のバックの中身が、10個、

とすれば、

私のバックには、多分100個の持ち物。

 

若い頃から、

海深く、空高く、

世界の果てに、幾度も出かけ、

小さな島国の常識は通用せず。

 

携帯電話などない時代、

外国で、テレフォンカードすら、

国によっては、売り場も様々、

トイレに行くにも、

コインでトイレットペーパー買って、

用を足すと言う国もある。

通貨が違えば、待ったなしの冷や汗もの。

 

という経験から、

危機感と、危険予測が、かなり強く、

医療品は勿論の事、

多少血が出ようが、呼吸困難になろうが、

処置できる医薬品、

倒れている人のための救命用具。

 

何処かで遭難した時の

飴ちゃんから、飲料水、

真夏に「貼るホカロン」から、

真冬に「アイスノン」

片隅には、密かに「紙パンツ」まで、

容易万端である。

 

とにかく、

「今から、ヨーロッパへ逃避行!」

と、言われても躊躇なく、

オーケーできるほど、容易万端である。

 

しかし、

よくよく考えてみれば、

人の為には多少は役に立ったが、

お陰様で、非常事態にはならずであった。

 

「鉄のバック」は、今でも健在。

持ってる私が、かなり古びてガタが来た。

自分一人で歩くのも、ままならぬ歳になり、

シルバーカートに変えるのも、嫌!

 

中身を減らしながらも、

やっぱり手元からは離せずに、

「鉄のバック」と、共にいて、

私を守ってくれている。

 

その内、

「鞄持ち」を引き受けてくれる、

エスコート役と出会えればと、

願っている次第である。