窓にあたる雨音が、
やっと、眠りについた私の脳を呼び起こす。
薄目を開けると、
白い二枚重ねのオーガンジーのカーテンが、
風もないのに、ユラユラと揺れている。
起きたての部屋の様子は、
儚い私の視力では、
壊れかけたTVの画面のようにぼやけている。
ベッド脇の、テレビを手探りでつけると、
どこかの地域の川の泥水が、
雨音を上回るように、
ゴーゴーと、唸り声を上げて、
全てを飲み込みながら、激しく流れている。
「いつから、日本はこんな事に!」
昔読んだ、旧約聖書の中に描かれていた、
神の怒りの場面が、脳裏をかすめる。
私は、ノアの箱舟に乗れるのだろうか?
非日常の日々の中で、
見えて来た「幸せな暮らし」とは、
なんだったのかしら?
オレンジ色の太陽の温かな光の中、
青い雨で濡れた美しい空模様、
小さな桜の花びらが、
風に抗うように踊る姿を眺めながら、
私は、そんな日々の朝を、
「本当は、誰と食事をしたかったの?」
原点にもとがえされて、
ゆっくりと、心が覚醒されていく。