耳を澄まして

「人の傷みや苦しみを知ろう」と、

人は言うけれど、

私の傷みは、誰にも分からない。

100人が100人、皆違う。

 

本人の気質や、価値観、思考、

生まれ持った運命や環境、

同じ人は、この世にはいないのである。

 

だから、

福祉関係者や、医療従事者たちが、

背中をさすりながら、

「大丈夫!貴方の苦しみは、皆一緒!」

と、慰めや激励で、支援する姿は、

おぞましい。

 

本人が、言葉で訴え、

苦しみから逃れるために、救いを求めるが、

本当に専門家のアドバイスによって、

救われた人はいたのだろうか?

 

ひと時の、安全と安心は、

与えられたとしても、

その人の人生に、いつまでも寄り添う事は、

出来ないのである。

 

心も身体も壊れてしまった人たちは、

相談窓口のカウンターの向こうにいる人に、

救いを求めているのではない。

生死を彷徨い、

本当に助けねばならない人達は、

その場所には現れないのである。

 

資格を持っていても、

知識をもっていても、

待ち人は来ないのである。

日常の暮らしの中で、

すぐそばに居る傷ついた人を、

貴方の温かな手が、唯一の救いとなる。

 

耳をすませば、聞こえてくる、

小さな声に、

気づいて欲しいと、願っている。