「死んだらあかんよ」と答えてくれた。

年寄り同士が、

何かの行き違いで、こじれると、

修復は難しい。

 

柔軟性に欠けた頭で、

思い込むと、

「ポストは赤い!」から、

脱出不可能である。

 

広い世界には、

「青いポスト」もあれば、

「黄色いポスト」も、あるんやけど?

 

「そんなもん、見たことにゃー!」

と、この目で見るまで、信用しない。

 

その割には、

目の錯覚か、妄想か、

いないものを、いたと言い、

あったものを、ないと言う。

 

何十年の月日を、

家族のため、国のため、

積み上げてきた、

血の出るような、苦労、

乗り越えてきた、悲しみ、

 

たどり着いたゴールには、

子供も、可愛い孫も消えている。

 

待っていたのは、

老人施設の見知らぬ人達、

「今日から、私達が家族ですよ」

と、言われても、

「知らんもんは知らん!」

と、口を閉ざすのである。

 

住んでた家とは、

比べ物にならない程の小さな部屋で、

笑顔を失った老人と、

たくさん出会って、きたけれど、

「いかがですかー?」

なんて、ふざけた言葉をかけはしない。

 

「しんどいですよね!

私も疲れて、死にたくなった!」

と、伝えると、

俯いた顔を上げて、

「死んだらあかんよ」と、

小さな声で、答えてくれた。

 

同じ道を辿ったものしか、

わからない世界である。