拾い忘れた小さなタイル

私の背中で、

小さなタイルが、落ちる音が聞こえる。

 

振り返れば、私の過去が、

剥がれてる。

鮮やかだった色も褪せて、

引っ付く糊も、乾いてしまった。

 

もう、

元の鞘には治らず、

大切な思い出の箱に、しまっとこ、

落ちたタイルが、愛おしく、

時々出して、眺めてる。

 

歯抜けみたいになったけど、

まだまだ、

私の姿は、残ってる、

拾い忘れた小さなタイルも、

誰かが拾っているかも知れない。

 

タイルが全部、剥がれたら、

一人でできない、ジグソーパズル、

いつか、

みんなで持ち寄って、

楽しい時間が、来ればいい。

 

色も柄も、映し出せない、

数枚の黒いタイルを、

ひっくり返せば、

誰も知らない、私の秘密

 

歳を経て、

剥がれたタイルの傷口が、

ヒリヒリと痛んだら、

優しい誰がが、薬をつけてくれる。

 

自然治癒力と、見守る人の側で、

乾いた瘡蓋になって、

新しい皮膚に、生まれ変わる。

 

だから、

ちょっと、不自由にはなったけど、

手を貸してくれる人がいる。

 

タイルに刻まれた、

悲しみも、苦しみも、

最期には、

感謝の涙が、洗い流してくれる。