ダークブルーの夜空に、
十字を切った、光を放つ、
久しぶりの、
満月に、魅せられている。
騙し討ちの様な、
冷たさの風が、
梅雨の蒸し暑さを、
押し退けて、
開け放した窓から、吹き抜ける。
その風の冷たさに、
懐かしい
想い出が、瞳の中に蘇る。
ヨーロッパだけの、サマータイム、
時が止まった、黄昏時、
街角のカフェで、
味わうアペリティフは、
至福の時間。
バックに忍ばせた、
ストールが、
昼間の暑さを、少し残した身体に、
心地良く、
白ワインが、喉を潤す。
暮れない夜に、
パリ人達との、終わらない笑い声も、
ヨーロッパの
何処かで聞こえるミサイルの音で、
かき消されてゆく。
赤いワインが、
飲み交わされる数だけ、
血に染まってゆく、ウクライナの空、
終わり無き、戦いと、
秩序無き、人間の、
神を裏切る仕業、
繋がった地球の空に、
凛として、輝く満月の光が、
冷たさで震える心に、
語りかけてくる。