空気清浄機のような街

ストレスがたまると、

友人を誘って、丹波路を走る。

終着地は、柏原である。

 

かつては、

乱世を率いた信長の弟信勝が治めた、

丹波国柏原藩、

華やかな信長の影で、基礎作りに、

貢献された。

 

最後が、お姫様であったが故に、

家督相続が認められず、

絶家となった悲しみの街。

 

いくつものトンネルを越えると、

眼下に広がる山並みと、涼やかに流れる川、

時代は流れ、

美しい景観と悲しみの血統は、引き継がれ、

先端医療から一番遠い街、

取り残された街でありました。

 

その街に、最近、

兵庫県丹波医療センター」

が設立されたのである。

隣町まで運ぶ救急搬送の中で、

間に合わず亡くなるという悲劇は、

この病院のおかげで、救われているという。

 

深い山並みと、

田園風景の中に、

まるで、宇宙ステーションのように、

忽然と、現れたその姿を見た時は、

「よかった!これで、地域の人達の命は、

救われた!」と、安堵したのである。

 

北の日本海からの新鮮な魚介類、

粛々と、大地を耕し続けて、

豊かな、季節の食材の宝庫である。

 

信勝の志を貫いた、

唯一の武士の子孫たちが作り上げた楽園。

出会う人達は、

みな農家の人たちではあったが、

凛として、

しっかりとした理念を語る方々であった。

 

十数年前、

街作りに関わり、

一年ほど、この地にお世話になったが、

春には、

美しい桜が舞い散る🌸街の人々を、

今でも、愛おしく思える気持ちが、

訪れるたびに、溢れてくる。

 

ピカピカのお魚と、

色とりどりのお野菜を、売るほど積んで、

高速道路の流れの中、

帰路に向かって走りぬく。

 

心の中に、入れ替わった風が吹いている。

まるで、空気清浄機のような街である。