惑う心を、少し残して
ストレスを振り切る様に、
北へ、向かって、車を走らせている。
夏を追いかけて、秋の風が吹いている。
思いきり、高く、青い空に、
真っ白な雲が、アートの様に美しい。
少し、足を伸ばせば、
瑞々しいお野菜や、
ピカピカのフルーツが、手に入る。
過疎と言われる小さな町でも、
フランスのマルシェのごとく、
美味しい食材が溢れている。
自然の豊かさに、圧倒される。
出始めた、小さな秋を見つけに、
遠くまで、来たけれど、
まだまだ、暦通りにはならないようだ。
カートいっぱい、幸せを乗せたら、
あの人が、何度も言ってた、
「安心と安全」に満たされる。
山あり、谷あり、川もあり、
広野に広がる豊かな自然。
通いなれた田舎町、
「住めるかな?」
「住もうかな?」
惑う心を、少し残して、
帰路へと向かう。
バリアフリーのお部屋に、
ボタン一つのエレベーター、
電話一本で届く、デリバリーディナー、
都会慣れした暮らしを、生きて70数年、
「現実は甘くはないよ」
と、耳元で、囁く声が聞こえてくる。