若い頃は、
デザイン、機能性、品質を、
重視したものを、買っていた時期がある。
値段も、
とびきり高く、「ウーン」と、
その場で、固まってしまう。
「これなら一生もん」
と、納得して、清水の舞台から飛び降りる、
のが、昔の人の買い物の仕方。
日用品から、おしゃれ小物にいたるまで、
なんと、「100円!」
そんなの、「ろくなもんやない」
と、馬鹿にしていたが、
今では、
家の中で、大いに活躍している。
わざわざ、
遠くまで行って、買うしかない商品を、
手間隙もいらずに、ネット購入。
「偽物?」疑り深い高齢者は、
店まで行って、買うしかない。
「デパートに行って来るわ」
と、言うと、
若者が、
「デパートに、何しに行くのん?」
と、不思議がる。
引越しのたびに、
「一生もんの家具」の、
大きさと、重さに困り、手放してきた。
狭くて、近代的な部屋には、
軽くて、透明感のあるクリスタルや、
アクリル素材の家具がシンプルで、
美しい。
南海トラフが来ても、
もう、家具の下敷きにはならない、
安全な暮らし。
祖母の桐のたんすも、
骨董のシャンデリアも絵画も、
柱のない家では、
使う事も、ままならず、消えて行った。
「大切なものですから」
なんて、思い込んでいたけれど、
何だか、心まで身軽になって、
大切なのは、物ではないと、
つくづく感じる、独居暮らしである。