「それでも、生きて」
小さな灯り取りの窓から、
うっすらと、光が差し込んでいる。
目を覚ますと、
暮らし慣れた部屋の造形が、
浮かび上がってきた。
光を失って、真っ暗闇の中で、
佇んでいた、
悪夢から、目覚め、
生きている事を、実感する。
永く、生きてきた中で、
これほどまでに、
人間の死が、儚い事を、
いまだ、感じた事はない。
昨日、
買ってきた花が、
一瞬で、枯れてゆく現実を、
目の前で、味わっている。
プールで、はしゃぐ子供達、
楽しい事しか、
思い浮かばない、灼熱の夏、
「熱中症」が、命を奪う、
見えない、ウイルスが、
世界を震撼させて、
単なる、
「季節の風邪」ではない事を、
思い知らされている。
そんな時代を、
狙ったかのように、
青い空を、
真っ赤な炎に、変えた戦闘、
惑わされた心が、
いとも、簡単に、
人間の命を、標的にする。
「ノストラダムスの予言」の、
人類の滅亡が、脳裏をよぎる、
右手に剣を、左手に天秤をもつ、
目隠しをした、
「正義の女神」が、現れる。
滅亡も、絶望もない、
世界にするために、
戦い続けている人達もいる事を、
忘れてはならない。
人間の心に、
備わった、叡智と強さが、
困難な時代を、切り開いて行く、
「それでも、生きて」
と、願っている。