「夢の中」を、迷走する

冷たい霧が、かかった森、

壁のない、

柱だけの家を見つけた。

 

ジャングルジムの様な、

細い足場を、

上へ上へと、登り始めた。

 

老婆が一人、

行けるわけもないのに、

ヨボヨボと、歩いている。

 

若い男女が、

下から見上げて、

その無様な姿に、笑ってるが、

突然、

男性が、そばに来て、

私を支える様に、腕を回した。

 

さっきまで、

笑っていた女性が、

大声で、叫んでいる。

 

聞こえないふりをして、

私の手を、握り返して、

「もう、大丈夫」と、

静かに、耳元で囁いた。

 

出会った事が、あるのか、

知っている人なのか、

記憶の中に、浮かんではこない。

 

繋いだ手から、

暖かな温もりが伝わって、

安堵している私がいる。

 

魔法にかかった様な、

「夢の中」を、迷走する。

覚醒しても、

日常と非日常が、繰り返されて、

過去と未来を、行ったり来たり。

 

「あの人は、誰?」

と、思いながら、

あの手の温もりが、誰かを、

忘却の箱を、開けて、探し出す。