「一人ぼっち」の、マラソン走者

去年のクリスマス、

壁に飾った、

クリスタルのトナカイが、

揺れている。

 

外し忘れている内に、

春が来て、夏が過ぎ、秋が来た。

間もなく、

今年のクリスマスが、やって来る。

 

こんなにも、早く、

こんなにも、人生が過ぎてゆく、

スピードが、「怖くなる」

 

60歳を、

越えてからの、10年なんぞ、

瞬き一瞬。

70代も、

あくびをしている間に、

半分過ぎた。

 

「最近、死ぬのが、怖く無くなったの」

呟いた言葉に、

60代の友人から、

「何故ですか?」と、問われた。

 

「私の人生が、見えて来たから」

と、何故か、胸を張って、

答えていた。

 

若さゆえの、好奇心と、夢が、

どんな失敗も、辛い挫折も、

乗り越えて、

走り続けた、私の人生、

 

メッチャメチャに、傷ついて、

「死にたいよー!」と、思ったり、

奇跡の様な、喜びに、

「まだ、死にたく無い!」と、思ったり。

 

思い起こせば、

誰からの、

応援も、支援もなくて、

結局、

「一人ぼっち」の、マラソン走者。

 

少しは、

大した人生に、

そこそこ、

生き甲斐のある、人生には、

「ならんのかい!」

 

ゴールの手前で、

私の人生、

「こんなもんか!」と、笑っちゃう。

 

手を伸ばせば、

届きそうな、テープの前で、

「まだ、何とかなるかも」と、

往生際の悪い老婆が、

立ちすくんでいる。