「南風に乗って」飛んでくる

「シロバナセンダングサの畑に、

蜜蜂が来て、

花粉を集めています。

蝶々が、蜜を吸っています。

子猫が飛び回り

蝶々を捕まえて遊んでいます。

私は、

いつまでも、見ています」

 

「異次元から」の、メールが、

「南風に乗って」、飛んでくる。

私には、

こんな美しいメールに、

返す言葉がない。

 

昔から、

「御雛様」みたいな顔した、

聡明な妹は、別格の存在であった。

 

愚痴やら文句やら不幸せを

並べ立てる家族の中で、

「私の様に」、

抵抗したり、

反発することなく、

部屋の片隅で、静かに佇んでいた。

 

そんな妹が、

「穏やかで、平和で、富裕層の棲む」

街から、姿を消した。

人間が手付かずの、自然が残る、

「常夏の島」へと、大脱走

 

南へ向かう船の中で、

家族の写真や、思い出ノートを、

海の中へと、

捨てて来たという。

 

誰一人知らない世界で、

「大和っちゅう」の、強い女が、

今日まで、

生き抜いてこれた理由は

 

宇宙の中の地球という星で、

人間という生命体と、

「共に暮らす」動物や鳥や魚達、

「鮮やかな色とりどり」の花々、

「たわわに実る」フルーツ、

「海の底まで見える」透明な水の魚達、

 

この世に生まれた意味は、

地球に、存在する理由は、

神様が作られた、

「楽園を見るため」と、伝えてくる。

 

生きることが、

苦しくて、辛くて、

「ボロボロ」と、泣き続ける姉に、

優しいホットメールが、

送信されて来る

 

頑張れも言わず、

慰めもせず、

理屈も言わず、

何も言わずに、

 

ただ、

一瞬で見た、奇跡の図柄を、

言葉に添えて、

南風が、運んできてくれる。