70年前の夢見る夢子

私の、実母の母(お祖母さん)の、

一番下の妹の娘は、

私と、同じ後期高齢者であり、

幼い頃から、仲が良い。

 

関係性は、

「いとこ?」でもなく、

「はとこ?」でもなく、

ようわからん!けど、

全く違う環境の中で、育ち、

その割には、

今も、気のあう仲良しである。

 

どこか遠いところから、

おばちゃんは、子供を連れて、

芦屋にある私の実家に、

よくたずねてきた。

 

私の母とも、血がつながり、

タイプ的にもよく似た、

「美しく、気高い女性」の二人であった。

 

後で、分かった事だが、

彼女の母は、

夫に好きな人ができて、

逃避行したので、

二人の子供を食べさすために、

生命保険会社の、勧誘係になり、

母が、病弱だったので、

いろいろな保険を、父がかけていたらしい、

 

そんな大人の事情は、

お構いなしの二人は、

子供部屋で、夢の世界にひたっていた。

現代なら、

彼女はアニメブームの頂点にたつほどの、

漫画家になっていたはずである。

 

瞳の中に、

キラキラとお星様のある、

お金持ちの、お嬢様と、

貧しいけれど、いつも夢みる、

漫画の好きな女の子の、

二人の物語。

病弱だった母が、亡くなり、
いつのまにか、疎遠になり、

再会したのは、

二人が大人に、なってからである。

 

お習字の先生になるほどの、

腕前と、

母親譲りの数字に強い、特技を生かして、

大きな製造工場の、経理になって

バリバリの、キャリアウーマンに、

なっていた。

「ねえ、昔みたいに、

漫画を描いて!」と頼んだら、

あの頃の、夢みる夢子は、

 「70年も経てば、消えるでしょう!」

と、言われてしまった。