第八話「有るべきものが無くなる」法則

 

「チーコ」には、

昔からの男性ファンがいる。

 

20代の頃に、

一緒に働いていた仲間なので、

かれこれ60年以上の歳月である。

 

この三人のお爺ちゃん達は、

アイドル応援団みたいなもので、

チーコの住まいの庭に、

家庭菜園をしたり、

建具を直したり、

何でも、お手のもので、

すこぶる、便利ものである。

 

チーコにとっては、

頼り甲斐のある、3本の命綱。

誰かの、彼女でもないので、

チーコを助けるというより、

自分達の楽しみの場所の、保持である。

 

まあ、わかりやすく言えば、

地域にたった一件ある、

「スタンドバーのチーコママ」に、

応援と支援、

シンボリックなチーコであればこその

唯一無二の関係性である。

 

「パソコン教室」と、

看板こそないが、

先生も、生徒もシルバー族。

おばあちゃま方は、

「夏の暑中見舞い作り」に、

「冬の年賀状作り」に精出して、

 

おじいちゃま方は、

車、送迎して、

自分では扱えないパソコンで、

完璧な「会計処理の事務作業」

が、チーコのパソコン教室の特徴である。

 

チーコは、

女の一生、夫婦にもならず、子も産まず。

だから、

歳を重ねて、動けなくなった時のプランは、

未だ考えてはいない。

 

皆んな、いずれ独居老人!

一緒に、シェアハウスに住んだら?と、

軽く、訪ねたら、

珍しく、真顔で帰ってきた言葉が、

「最期まで、一人!」

 

お互い離れていても、

意見が合わず、思いが「ズレ」る。

その小さな「ズレ」から、

人間の煩悩や悪意が、

少しずつ、生み出されてゆく。

 

共に暮らせば、

渦の中で暮らすことになるから、

天国には、たった一人でゆく、

法則がある。

「 あるべきものが、無くなる」

自然現象を、しっかりと受け止めて、

消えてゆきたい。