第十二話「にわか先生から本物の先生になる」

「チーコとユーコ」は、

長い付き合いではあるが、

プライバシーに関しては、

ほとんど、知らない。

 

親戚であるが故に、

大人の付き合い次第であり、

冠婚葬祭の付き合い程度である。

 

身内には、都合の悪い事は、

言わないのが、懸命である、

何故かと言えば、

倍になって噂が、広がるのは

不思議である。

 

 

大人になってからは、

「チーコもユーコ」も

風の便りで、うっすらと、

近況を耳にするが、

お互い、全く別世界での暮らし、

興味もなければ、その時点では、

接点もなかったのである

 

「ユーコ」は、

華やかなアパレルの世界へ、

やり手の女社長に、気に入られ、

通信機器の無い時代

欧米に買い付けに、行っていた。

 

「チーコ」は、

簿記、経理、会計など、

事務ができていたので、

当時は盛んだった、

製造業で重宝がられていたようである。

 

その二人が、

出会ったわけは、

天から見ていた、神様だけが知っている。

 

教員免許も持っていない二人が、

「先生」と言われる、

職業になった原因は、必然であった。

 

「チーコ」は、若い頃から、

会社の経済を握る立場にいて、

定年になってからは、

いち早く、

「ソロバンからパソコン」に、変換。

営業しかできないサラリーマン達の、

「パソコン教室」をひらき、

「先生!」と、呼ばれる事となる。

 

「ユーコ」は、

阪神大震災で、勤めていたアパレルが、

つぶれて、働き場所がなくなり、

以前から、興味のあった、

「厚生省管轄の講師」になるために、

病院の中にある、長期療養型の、

患者の排泄介助から、

スタートしたのである。

 

まずは、

現場経験を、つみあげ、

つぎは、

国家資格を取得して、

福祉医療に関わる、講師となった。

で、

「先生!」と、呼ばれる事となる。

 

にわか「先生」家業が、

本物の「先生」になる、道のりは、

それほど、

簡単ではなかったのである。

 

「コンピューター科学」と、

社会福祉学」の合体により、

未来の、人間社会が創られていくために、

二人は、

出会わされたのかもしれない。