「人間の不養生」

今、一番ほしいものは、

「なーに?」

と、聞かれたら、

「筋肉!」と、答える。

 

三度ほど、聞き返されて、

「ほーっ」て、絶句!

まさか、

80歳近いばあさんの口から、

そんな、生々しい言葉が、

飛び出すとは思っていないらしく、

今の世の中、さもありなん。

 

する事もなく、

一日中、テレビを見ていれば、

ほとんどが、

「高齢者に関する健康」に、関わるもの。

 

ドクターが出演の、老人病、

若返りの、サプリメントや化粧品、

施設や、高齢者住宅のCM.

 

何だか、

75歳以上になれば、

「高齢者ベルトコンベア」に、

乗せられて、

同じ目的地に向かって行く。

 

不思議と、

人間の身体は、

「末端から」、使い勝手が悪くなり、

頭は、記憶やが支障をきたし、

健忘症から、認知症に進歩する、!

 

次なる「末端」は、

ダメージがくる手足の不自由。

骨は脆く、筋肉はおちてゆき、

見てくれだけの大根足も、

「中身」は、カスカスの空洞化、

 

10年前の60代には、

細身のパンプスも、はきこなし、

スカートと、ストッキングは、

ワンセット。

颯爽とまでは行かないけれど、

仕事に支障のないレベル、

 

しかし、夜ともなれば、

「お風呂」で、温め、

「ベット」で、足をさすり

不安が、よぎっていたのである。

 

歳を重ねるたびに、

ペタペタと、貼り付けていた、

綺麗なタイルも、

ヒビが入ったり、

剥がれ落ちたり、

壊れて行く。

 

若い頃から、

無理を承知で、

こうなる事も、どこかで予測をしながらも、

自分の身体を、

酷使してきた、結果である。

 

取り戻すために、

もうひと頑張りの、長い道のり、

筋肉を作る食事、

朝、晩のストレッチ、

一日、8000歩の、ウォーキング、

 

高齢者や、介護者に、

教えてきた本人が、

「福祉の人間の不養生」をして、

人には言えない情けなさである。