第十六話「頭のてっぺんから、温かな湯気が出る」
チーコ先生は、
ニャンコが好き!
「野良猫がついて来たのよ」
「餌やったら、家に住み着いたんよ」
「猫が勝手についてくるわけない!」
「隠し持った餌で、騙したはず!」
猫嫌いな私からすれば、
お世辞にも可愛い、
綺麗な猫とは言えないのである。
鼻がズルズルいうので、医院に行くと、
検査の結果は、
「エイズです!」といわれて、
「エーッ!治療代どうすんのん」
と、私はそちらを心配する。
それでも、チーコ先生は、
一生懸命世話をして、
「幸せなにゃんこ」は、天国へ、
ほっとしたのも束の間、
ある日、
目新しい猫たちが、
見送る中を、
「大人しく、お留守番してるのよ」と、
チーコ先生の、新しい家族がふえていた。
野良猫を、
「家に引っ張り込んで」は、
お嬢やおぼっちゃま猫に、
育てようとするが、
相手も、生まれた時から、
親に捨てられ、
ここまで行きぬいて来た、
「したたかもの!」
可愛い顔して、
「ママ、早く帰って来てね」と、
言うたかは知らんけど、
猫嫌いな私からすれば、
どう見ても、幸せ薄い猫には見えず、
腕の毛をかきあげれば、
「刺青の一つや二つ」
ありそうな雰囲気である。
そんな猫たちのために、
老骨に鞭打って、
パソコン教室で、
餌代稼ぎに精を出す。
「笑顔と優しさ」は、
天下一品のチーコ先生、
人間だけではなく、
猫でも感じるのだろう。
気がつけば、
チーコ先生の、ベットの中まで、
侵入してくる。
パソコン教室の生徒は、
高齢者ばかりであるが、
パソコンならいたいのではなく、
先生に会いに来たいのである。
本来の裏家業は、
人の道を教える「教祖」であるが、
待ってる信者の数は、
増えてはいくが、
「呑気な父さん」ならぬ、
「呑気な教祖」である。
それでも、何故に、
「待って、待って、待ち続けて」
会いたくなるのか、
話したくなるのかは、
明らかなる理由がある。
頭のてっぺんから、
ほのかに出てくる、
「湯気みたいな暖かさ」は、何だろう?
親戚でもあり、
「一滴の血」は、
私の中にも流れているはずではあるが、
チーコ先生に群がる人達、猫達は、
私の周りには誰もいない。
この「ミラクルな世界」から、
ひと時も、
目が離せないのである。