一度愛したら永遠。

囁くように、貴方の声が聞こえた。
「仕返しはしないの」
貴方の真っ白な美しい翼で、貴方は飛べるわ!と、言った私の言葉を制止して、
たった一度だけ飛ぶために与えられた、大切な翼を、今は使わないの。
悲しみのバルーンの中に、吸い込んだ貴方の思いを、自ら断ち切り、大空へと、飛ばした。
そのようになりたいと、願った貴方の魂を、
理解して、可能性を見極める戦いを選んだ貴方に、エールを送りたい。
大切な日に大切な人と、飛びたいと願った奇跡を信じて、二人のすれ違いの時空は、大きく、
旋回して行く。
見つからない忘れ物を探し続けて、吹き荒れる
嵐の中で、濡れた背中の翼が、寒さで震えていた闇夜。
身動きのできない呪縛の両手で、強く、我が子を抱きしめる。
そんな貴方を、見続けて来た長い月日。
背中の翼は、少し小さく、少し陰りを見せたけれど、振り返る貴方の笑顔は、いつもと変わらない。
あの時、飛ばなくて、良かったね。
飛べなくて、良かったね。
貴女が誓った、貴女が守り続けた希望は、
大空へ、飛び立つ自由ではなく、貴女を裏切った人を、見捨てず、赦しという高貴に満ちた作業でありました。
「一度、愛したら、永遠よ。」
と、必ず帰ってくると信じて、待ち続けた扉を開けて、家族が、再会したのです。
失った空白の時間を、ゆっくりと、取り戻して欲しいと、祈っています。