心のケアプラン

夜が明けるのが遅くなり、ベットから、離れ難い季節になって来た。
しとしと降る雨が、窓ガラスを濡らしている。
灼熱のあの夏が、嘘のようである。
あれほど、秋を心待ちにしていたはずが、
少し重く、少し暗めの風が、気持ちまでも、
落とし込んで行く。
季節の変わり目など、気づかずに来た若い頃を思い出す。
まるで、飛行機並みのスピードで、走り続けて来た人生を、寝起きから想いを馳せて行く。
後悔はなかったのか?
幸せだったのか?
そして、本当に、生まれて来たことに感謝しているのか?
友人達との会話の中では、こんな言葉は、
軽いタッチで交わされてきた。
「元気で、ここまで、生きれたんだから、
上出来よ!」
と、人は言う。
笑顔でうなづきながら、そうなんかなーと、
しゃんと、納得していない自分がいる。
傲慢なのか、欲が深いのか分からないが、
人生の大半は、吹く風に、抗うことなく、流されるように生きてきた自分に、酷く後悔している。
事実が捻じ曲げられていても、
「そうではないのです!」
と、人のことも自分のことも、言っては来なかった。
時間をかけ、大切な事柄や、大切な人と、真摯に向き合わずに、逃げるように通り過ぎてきた、卑怯な自分に、大いに反省している。
「もはや、終わったことやん」
と、歳を重ねるたびに、思えない自分がいる。
介護保険を受けるには、充分な年になり、
終活のケアプランの中に、身体だけでなく、
心の介助項目があれば、ありがたい。
「良かったー」と、安心して、この世を去りたいと、私たち高齢者は、皆、少なからず、願っているかも知れない。